2-1-7.鬱病が治る、というのはどういうことか?

1.鬱病が治る、というのはどういうことか?

一般的な病気治療というのはまず、症状や器質疾患を修正、それに伴う愁訴を取り除く、ということでしょう。
癌と診断されればまずがん細胞を取り去る対処を行い、次に身体を元に戻していく、再発を防ぐ予防策を取る、というような流れでしょうか。
癌になるかもしれない・なりそうだ、という状態では普通病院に行かないし、器質障害が自覚されて初めて病院に行くでしょうから、治す順序はこうなると思います。

しかし、とりわけ鬱病の場合、症状に対して薬などで対処することと同時に、できるだけ早めに根本対処に向かったほうが結果的には恢復が早くなるのではないかと思うわけです。
私の経験からも、薬だけでは治らないと思います。


鬱病も明確な症状が出ます(2-1-1.身体的症状:各種の痛み、不具合、疲れ)。
これはこれで嫌なので、服薬その他の方法で取り除きたいし、症状があるうちは考えるのも動くのも大変なので、まず愁訴を取り除く必要はあるでしょう。
しかし、実際に肉体や脳に明確な器質疾患が認められることは少なくて(実際、鬱のさなかに受けた私の健康診断の結果は良好でした)、頭痛や肩こりや胃の痛みや血圧に効く薬が処方されるわけではありません。
眠れないから頭痛がする、だから睡眠薬を飲んで眠れるようにする。ここまでは対症療法ですが、なぜ眠れないのかを探って、その対処をしない限り睡眠薬は手放せないことになります。
だからこの根本原因とも言うべきものがなにかを自分で(必要なら関係者含め)考えてみる必要はあると思います。
鬱になった原因が明確であれば、まずなによりその原因事象を取り除くようにしてみる。
仕事の過労であれば仕事を軽減したり休む、喪失体験であればそれを癒すための対処、などなど、ストレス原因に直截的に働きかける方法を取るのが最短のような気がします。
ただ、根本対処をするにも、不眠や各種の身体的症状がある段階ではそれ自体も辛いし、症状が辛い間はこのような対処に向かう気力がなかったりします。だから薬の利用も必要とは思いますが、できれば最小限にしたいところです。
最終的にはその人にとって「自然」な状態に仕向けてくれる方法を探し試すのがいいのだろうと思います。

2.治療の情況

【クリニックは10分診療・・・】
私の通うクリニックはわりといつも混雑していました。完全予約制でしたがいつも10分~30分待ち。
主治医も大変そうで、前回の診察の話を覚えていないこともあったり。
近所に他にもクリニックがあって、そこだけが流行っていたのか他も混雑していたのかわかりません。
とまれ、診察はそれまでの症状を話して薬の調整をしておわり、いつも10分程度です。
これが保険診療の限界のようです。

【教科書通り?】
忙しいから仕方ないのかもしれないし、あるいは患者の生活を意識してのことかもしれないけれど、治療に関してなかなかドラスティックな提案は出てこない感じでした。
休職も自分から言わなければ主治医からの提案はなかったかもしれません。(この点は相棒の言葉が有効でした。生活の実情を共にしている相棒の提案なのでこちらも安心して受け入れられます。)
のちにこの点を別の認知療法施術者に話したら驚いていましたが、まあそういう医師もいるということです。患者の経済生活を勘案してまでのアドヴァイスは難しいでしょうから、一概に休職を薦めるのも慎重にならざるを得なかったのかもしれません。
人間的な印象は良い医師でしたが、患者一人一人に細かく対応できるという状態ではなかったように思います。
また、私の治療の後半(二度目の休職時)、クリニックの事情で主治医が変わりました。
その主治医はさらに教科書通りという印象を受けました。転院も考えましたが、その時点ですでに2年近く通っていたので、もうしばらくつきあってみることにしました。
教科書どおり、というのはすなわち、睡眠障害に関しては朝日を浴びろ、とか、抗鬱剤を減らす前にまず睡眠薬の調整が先だ、とか、一般論として本を読めば書いてある程度の話が多かったような。やはり忙しかったからかもしれません。
「薬について」で詳述していますが、私の場合後半戦はSSRIの効き方が変わってきていて、これが不眠に影響しているようだったのでその見解を伝えましたが、なかなか理解されませんでした。

ともかく、休養、運動するにしても無理のかからない程度にすべし、それから就寝時間をもう少し早めにするようにすべし、もし早朝覚醒のあと眠くなった場合でも、いつまでも眠るのでなく11時なり12時にでもきちんと起きるリズムにしたほうがよい、などなど、主治医も薬剤師さんもこうしたアドヴァイスをくれます。
朝起きて8時間働いて家に帰る生活に戻るためには尤もなアドヴァイスですが、治すために私が採った方法はこのアドヴァイスに従った方法ではなかったわけです。


【自分で考えることが肝要】
残念ながら10分診療だと主治医からの十分な提案は望めないのかもしれません。
カウンセリングなどでもっと踏み込んだ話ができる環境があるとよいのだろうと思います。
私もカウンセリングをやってみましたが、自分に合ったカウンセラーを探すのはとても難しいと思いました。生活や仕事を共にする信頼できる家族や友人がいる場合は、意外と彼らの意見のほうが役に立つかもしれません。
ある程度気力が戻ってきたら、治りたいという意思を持つこと、自分にとってなにが「自然」な状態かを考えて実行してみることは絶対必要だと思います。そんなにがむしゃらに、じゃなくていいですけど、この点は自分のために少し頑張ってみるべきでしょう。
周囲の人が「頑張れ」と声をかけるのはいけない、というわけではありません。恢復に向けて頑張らないといけないポイントはあります。そこを応援するのは全く問題ないと思います。

3.診察を受けるにあたり

それから参考までに、診察や自分で考える際にあるとよいもの=自分についての客観的なデータ=について書いてみます。

そもそも記録を取りだした理由は、
1)もともと記録魔だから
2)日々あまりにぼんやりしていて診察時に「今週どうでした?」と訊かれても情況が
思い出せず、話にならなかったから、

です。私は二種類の記録を取っていました。

【体調記録】
自分の情況やら心情を客観視するために日記を書くとよい、などと言われますが私はそんな大層な理由ではなく、たんに覚書として始めています。睡眠薬の効き方はどうだったか、眠れたか、便秘は、頭痛は、ほか特別なことがなかったか、こういったことを書いておいて、診察の時に話ができるようにしてたわけで、あくまで「記録」です。これは体調が良くなった現在も記録魔として続けています。

【睡眠データ】
睡眠障害についてはエクセルで表にしてデータを取っていました。
・睡眠薬を服薬した時間
・眠りついた時間(推定)、
・中途覚醒した時間、
・最終的に布団を脱出した時間
などをとっておけば、眠れなかったのが何時間で、眠ったのが何時間かは自動的に計算できます。一度表と関数を作っておけばあとは簡単です。
これでどんなふうに眠れたのか客観的な観察ができました。この表には時間の他に、服薬した薬の種類と数も日別に書いておいたので、薬の影響も推し量れます。
のちに自分で断薬計画を練る時の参考にもなりました。
手間や負担がかからない程度でこうした記録をとっておくと便利です。
診察でもこの表を見せていました。


いろいろやり方はあるでしょうが、治すにあたり自分を診るため、考えるための材料はなにか準備しておいた方がよいです。

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ともかく、人や環境や多少の薬の助けは借りるとしても「自分の鬱は自分で治す」意思は必要です。癌や風邪とは違います。
主治医やカウンセラーの話のほかに、鬱の治し方、睡眠障害の治し方に関していろいろな資料を漁りましたが、本を読んでもやはり自分で考えないと駄目です。
ただまったく参考にならなかったわけではなくて、以下の3冊だけ、自分で自分の方法を考えるためのヒントにはなりました。

『クスリに頼らなくても「うつ」は治る』泉谷閑示(著)
『「社会的うつ病」の治し方―人間関係をどう見直すか』斎藤 環(著)(新潮選書)
『うつは薬では治らない』上野 玲(著)(文春新書)

タイトルがちょっと不適切な気がしますがそれはさておき、どれも「治し方」の実用書ではありません。
あくまで考えるための参考にできる本だと思います。もしかしたら森田療法はこうした理論的な話を方法論として完成させているのかもしれませんが、自宅ですぐに実践できるものではありません。ですので私は上記を参考にやってみたわけです。


(「2-1.鬱の数年」終わり)