2-1-3.うつ病の心理的症状

続いて心理的な症状についてです。最初は身体的症状が出てきましたが、そのうちただの「疲れ」とは違うな、と気づき始めますが、以下そうした「違和感」がなんだったのかについて記録します。

<><><><><><>

アメリカ精神医学会の定めた「精神障害の診断と統計の手引き」(DSM-IV)の診断基準や、世界保健機関(WHO) による「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」(ICD-10)の診断基準はひとつの目安にはなるかもしれませんが、あまり教科書的に判断できないものです。
ですがおそらくたいがいのクリニックではこれらを基に判断している模様です。

大きなポイントのひとつは、
「ほぼ毎日1日じゅう気分が沈んでいる、ほぼ毎日一日中何に対しても興味がわかず、楽しめない、という状態が2週間以上続いている」
というもの。2週間程度、というのがマイルストーンのように言われています。
辛いこと悲しいことで落ち込んだりした場合、たいていは約2週間も経過すると少しずつ癒えてくる、というのが普通で、2週間以上経過しても治らないのは病が始まっている惧れがあるから、という判断だそうです。

もうひとつは、ICD-10の診断基準・F32.0軽症うつ病エピソードにおける、
「2. 通常なら楽しいはずの活動における興味や喜びの喪失」
でしょうか。鬱が「やまい」となる一番顕著な条件は、この「好きなことがやれなくなる」という気分変化だと思います。(昨今の新型うつはどうもこれには当たらず、条件が違うようですが)
自信喪失、抑うつ気分、一時的な不眠や体調不良が2週間続く、などは「鬱(うつ)病」でなくとも起こりえる「一時的な状態」の場合もあり得ますが、これらの症状に加えて「好きなことがやれなくなる」状態が鬱病であることの境目のような気が、いたします。

そのほかにも、決定的に何かが違うと感じたポイントがありました。
認知行動療法でも言われている、三つのポイント。
①自己否定:自分に対して悲観的
②孤独感:周囲に対して悲観的になることで、孤独を感じる
③将来悲観:近くも遠くも、悲観的。先行き不安。
これらに照らしても思い当たる点があり、そしてそれをわりと明確に自覚したとき、ただの疲れと違う、と感じて自分の鬱に気づいたと言えます。
とにかく「気分転換ができず」「近い将来も遠い将来も全く楽観的になれない」ということです。口に出さなくとも頭で考えて眠れなくなるほど。
風呂に入って一眠りする、あるいは趣味に没頭する、良いほうに考えてみる、などといったことで一時でもクリアされる、ということがなくなります。尤も鬱病になると眠れないわ趣味に没頭などできないわ、で、ニワトリが先か卵が先かわからない状態ですが…。

<<常時緊張状態が続く>>
私の場合、気分が沈むのと緊張状態は裏腹な状態にありました。
風呂に入っている間はリラックス、というわけにはいかず、風呂に入っていても仕事のことを考えたり、簡単に一眠りすらできなくなっていました。床に入っても明日どうすべきか、などと考えるも、悪いほうにしか考えられない。
その反面、ひどい無力感と無気力感があるので、無気力なのに明日の仕事の対応を考えなければならない、という矛盾した状態が続いていました。けれど既に鬱状態なので、いくら考えたっていいアイディアが浮かぶわけでもなく、実際の仕事場でも上手い対応ができないのでさらに気分が沈む、の繰り返しで繁忙期は完全に空回りしていたと思われます。


<<好きな音楽が聴けなくなった>>
これは無関心、無感動な状態でしょう。
せめて家にいるときや休みの日は気分を変えて音楽でも、というこれまで普通だったことができなくなりました。音楽をかけると、やたら煩く感じて聴いていられなくなる。もちろんテレビ、ラジオも駄目。
もともとは音楽好きで、7チャンネルのスピーカーシステムで1200枚ほどあるCDを聴いたり、ライブハウスに行って生演奏を聴くのが大好きですが、鬱の数年の間音楽はほとんど聴いていません。それは煩わしくて聴けなくなったから。
テレビはくだらないのでもともと殆ど見ないのだが、比較的気分が落ち着く夕方あたりにNHKのニュースなど淡々とした音を聞く程度なら大丈夫でした。
これが健常時との大きな違いで、はっきりと鬱を自覚したポイントのひとつです。


<<気持ちの落ち込みが身体に出る―心と体がバラバラ>>
朝7時に目覚ましが鳴る。しかし入眠障害や中途覚醒しているのでこの時点では非常に眠い。が、仕事にはいかなければならず、やむなく起き上がり、部屋の中を歩き出す。しかし無気力に加え尋常ならざる眠気でそのまま床に蹲る。正座して上体を伏せた状態で、亀のように蹲る。眠いのに頭の中は妙に騒がしく、煩いくらい。動かなければと思っても、なぜか動けない。どうも単なる寝不足とは違う。猫がやってきて亀になった私の背中に乗る。
このあと、少しでも気力が出るとふらふらながらも出かけるが、どうしてもダメなときは少し遅れて行くか、最悪は休む。
思うように体が動かない、というのは鬱病の典型的な症状です。

<<双極性ではなかったらしい>>
たぶん。
鬱のさなかにも時に、早朝覚醒したのに妙に気分がよい、一睡もしていないのに頭がすっきりでテンションも高くエネルギーも感じられる、などということはありました。
そういう時は寝てないのにそのまま仕事に行き残業までやったり、休みの日であれば朝っぱらから映画を観に行ったりしていました。もともと快活でも積極的でもない自分の性格からすると、この程度でもある種の「躁状態」だった可能性はあります。ですが、丸一日徹夜のまま仕事をすればその翌日はダウンしたり、映画に行っても途中から眠り込んでしまって結局ほとんど覚えていない、というありさまだったので、やはり躁ではなかったかと思います。のちに、データ(別稿「2-1-5.断薬から恢復」に詳述)を見ていて、こうした状況はSSRIがかなり影響しているのかも、ということに気づきました。というのも、SSRIを飲み忘れた日は比較的眠れたり、気分が高揚することはなかったりするからです(薬のお話は別稿「2-1-6.うつ病における薬について」に詳述)。

⇒次のお話(2-1-4.休養の仕方: ウツになってしまったときの効果的な休み方)へ