2-1-1.うつ病に伴う身体的症状:各種の痛み、不具合、疲れ

ここでは実際に起きた身体的な症状について、記録をまとめてみます。

(1)疲れ―「疲れた~」という状態について

三十代になって職責等も大きくなってくるにつれ、次第に疲れるようになった。
といっても三十代最初のころはそれこそ「疲れた」というのが口癖のようになってはいたものの、のちに口に出していられるうちは言うほど疲れていないかも、と思うようになった。つまり、本当に疲れたときというのは、喋るのも口に出すのも面倒なわけです。

野球のバッターがデッドボールを食らったとき、中途半端に当たると痛さより怒りが先に来て、まっすぐにピッチャーに走り寄ることがありますが、痛みが非常なときはピッチャーに走り寄るなど不可能で、痛さでその場に崩れ落ちるか蹲ることになります。
疲れも似たようなところがあり、少々の疲れなら「疲れた、疲れた」と言っていても、風呂に入って一眠りする、あるいは趣味に没頭する、などといったことでいったんクリアされる、もしくは転換になります。しかし本当の疲れは、このような所業によって都度都度クリアされずに蓄積し、そのうち「疲れた」なんて言葉も出なくなるくらいにぐったりしてしまいます。しまいには崩れ落ちる、うずくまる、気持ちと裏腹に体がいうことを聞かない、といった心持になります。

(2)便秘

鬱になるまえから疲れると便秘気味になり、時折サプリメントを使用していましたが、これがさらに悪化しました。
仕事が忙しいときや緊張が多いときは便通が週に二、三回。とくに緊張が続くと、出てもウサギの糞のようだったり、平日五日間まったく出ない、といったこともありました。
便秘が続くと、実際吐かないまでもぼんやりとした吐き気を感じたり、実際に吐いたこともあります。
またある日、仕事帰りにビールを一杯だけ飲んだところ、帰りの電車内で、周りの風景が赤外線カメラの映像のように赤黒くチラチラ見えだし気が遠くなってきました。幸い、次が自分の降りるべき駅だったのでそこで降りてホームのベンチになんとか座ったまではよかった。しばらくベンチでうずくまって、目の前がちゃんと見えるようになり、大丈夫そうだと思って立ち上がって歩き出したとたん、がらがらっとシャッターの閉まるような大きな音がしました。通行人の「大丈夫ですか?」という声で気がつくと私はシャッターにもたれかかって倒れていたわけです。シャッターの音は自分が倒れ掛かったときの音でした。倒れこんだのが線路でなくて良かった、と思いました。やっとのことで立ち上がると、なんとか自宅まで歩いて帰れましたが、帰りついてから猛烈に便意を催し、それが終わると不調が取れました。
つまりこのときの失神? による転倒は、便秘による貧血のせいだろうと推測しているわけですが、そのくらい便秘は大変です。
それでも本格的な鬱になる前は土日の休日で少しリラックスすると出たりしていました。が、それがひどい下痢になることもあったりで、便秘はやっかいなものです。

(3)睡眠

鬱病における睡眠の不具合は一口では言えない複雑さがあります。
一般的に言われている睡眠障害の形態(早朝覚醒、中途覚醒、入眠障害、などなど)はすべて経験しました。
人によりこれらの特定の症状だけが出る場合もあるでしょうし、複合する場合もあるでしょう。
とまれ、これについては別項(2-1-2.睡眠~「昼寝を待ちわびて」)で詳述します。

(4)怠い

鬱はダルいんです、とにかく。
適切に眠れていないし、便秘だし頭痛だしで、とにかく動くのもなにするのも億劫になるくらいだるい。
仕事の朝、なんとか起き上がって顔を洗っても、とても眠くだるく体や頭や手足が重く、また布団に倒れこんでしまうような状態になることがよくあります。
あまりに酷い時、休めそうならなんとか休むかそうでなければ午後に出社、というようなことになります。しかし大事な打ち合わせなどがあって立場上どうしても出かけないといけない、などという場合はあったわけで、そういうときは立ち上がって出かけますがそんな状態では頭も働きません。
しかし私の場合は、それで周りの人や仕事に大きな損害を与えることもなく、どうにかこなしてしまっていたようです。休職するまでは周囲には鬱のことを公表していなかったし、仕事上問題を起こすことによって鬱が表面化する、ということもなかったわけです。
しかし自分ではなにごとも頭ぼんやりでスムーズにこなしている感覚はなかったので(当たり前ですが)、時折「問題になってないか」周りに訊いてみたりしていました。今考えるとよくその状態で仕事をしていたと思いますが、いずれそれも辛くなって休職したわけですが。

(5)無気力、無感動

所謂「無気力」なかんじがして、休日出かけることや(本当は大好きな)音楽を聴くのが億劫になってきます。
だるさとは違います。先述の「だるさ」は身体的なものですが、ここでいう「無気力」は精神的なものです。
家に帰って7チャンネルスピーカーのステレオシステムで好きな音楽を聴く、あるいはライブハウスに行って即興ジャズを聴く、などすれば疲れが取れるというか気分転換ができたはずなのに、その音楽がうるさくて聴きたくもなくなる。もともとテレビはほとんど見ないのだが、当然テレビのお喋りなんぞ鬱陶しくてしょうがない。
休日は相棒と二人で散歩するだけでも結構気分転換になりましたが、いつしか散歩の最中にふと行き詰まっている仕事のことを思い出したりして沈んだ気分になる。
音楽を聴いたり旅行に行ったりという、これまで好きだったり気分転換になっていたことが面倒になったり嫌いになったりします。
詳しくは別項「2-1-3.うつ病の心理的症状」にて。

(6)頭痛

残業で遅くなる、すると帰るのが遅くなり、当然寝るのも遅くなる。しかし布団に入っても睡眠障害ゆえ適切に眠れず、なんとか朝起きて仕事に出かけるも頭痛がひどい。特定の事情による頭痛持ちでなくても、寝不足により頭痛が起こることはよくありますが、鬱病だと睡眠状態との関係で、当然と言っていいほど頭痛があるのではないでしょうか。前頭葉が痛んだり、左の側頭葉が痛んだり、眉間やこめかみだけが痛んだりといろいろです。
私は仕事場の机の中には常にバファリンを入れていて、適時飲みながらやっていました。

(7)眩暈

先述の便秘による失神とは別に、よく眩暈を感じていた時期がありました。軽い眩暈ですが、前後左右にぶれて危険なので、相棒に医者に行けと言われて(私は相棒に言われないとなかなか医者に行かないのでした…)内科に行き、確か「良性発作性頭位めまい症」との診断で漢方(苓桂朮甘湯エキス)を処方されました。
この時の眩暈は一旦改善されましたが、のちに鬱がもっと酷くなって休職した際、眩暈のためえらい目にあいます。
ある日の夕刻少し気分がいいときに、近くのスーパーまで買い物に行こうと家を出ました。
その日は通常に比してよほど良かったのか、ちょっと走ってみようという気になりました。それで自宅前の片側二車線の道路を渡ろうと小走りに走ったところ、道路の真ん中を過ぎたあたりで膝から崩れ落ちました。路面に膝をひどく打ち付けたと同時に目の前がクラクラして何処にいるのかわからないような意識でした。けれど路上なので早く立たなければ、と思ったのかすぐ立ち上がり走り出そうとしましたが、すぐには立てずまた崩れ落ちていきます。ようやく目の前の像が明確になったところで立ち上がり、今度は落ち着いて対岸の歩道まで歩きました。
幸い車が来ないうちに渡りきったので良かったです。しかし歩道に上がってから膝の痛みに我に返り、見てみるとパンツの膝の部分が裂けて多量の出血をしていました。なのになぜかそのまま買い物に行き、自宅に戻っています。

(8)痺れ

痺れます。
まず服薬する前(通院以前)、2005~6年あたりもやはりハードワークで、このときは常に手足の先に軽い痺れを感じたりしたこともありました。
通院して服薬するようになると今度は、抗鬱剤による痺れや、体に軽くピリッと電気が通るような感じを経験します。これは薬を飲んだからではなく、飲み忘れたときによく起こります。
そしてのちに自己流で断薬したとき、この「電気ショック」がなくなるまでを目標に、調剤したわけです。

(9)痛み

鬱は痛いです。
どういう訳で脳がそこに痛みを感じるのかわかりませんが、なんでこんなところが急に? と思うようなところが痛みます。
たとえば、2009年半ばのあるとき、背中がやたら痛いと思っていたら、次に胸のあたりも痛くなり、喉の奥、食道が痛いような感じになりました。まったく食べられないというわけでもないのですが、咳やくしゃみ、飲み下しのときに、胸と背中に強烈な痛みを覚え大変辛かったことがあります。別の病気を疑いましたが、これは一週間くらい続き自然に消えていきました。
それから首、肩、背中。これは常に痛いです。凝っているという状態を通り越して「痛い」です。ストレッチなどしてもダメです。常に緊張状態なので、口の中に力が入ります。つまり、常に噛んでいるわけで、これが首、肩に影響します。
眼もそう、眼の周りのマッサージ、頸椎の根本のマッサージなどやってもダメです。
膨らんだ目ん玉が内側から眼孔を圧迫し、それが脳を締め付けているかのような鈍痛があります。
またある人は急に心臓が痛い、と言い出したこともあります。

(10)太る~ある種の食欲の異常?

鬱は太ります。あるいは痩せます。
仕事をしながら通院し治療していた時は食欲が落ちて週2キロ急減することがあったり、休職してSSRIを飲み始めると、こんどは過食気味になったりしました。
休職中のこの時期には10キロほど太りました。とくに不眠によるイライラから過食気味になって結果太った、という図式です。
日中はとにかくチョコレートを大量に食べてました。そして中途覚醒で夜中(朝方)三時や四時に目が覚めてしまって眠れなくなると、イライラして台所でビールを飲んだりしていました。寝る前に睡眠薬を何種類何粒も飲んでいるのでそこに飲酒するのはよくないのですが、そんなことはお構いなしに(思い至らず)飲んでました。これらが格段に効いたのだと思います。
休職中は食欲が落ちることはなく、また食事が不味く感じるという症状もなくて、薬の効果も相まってか却って過食気味だった感があります。もちろんだるくて運動などしないところに食べるだけ食べているので、太って当たり前ですね。

(11)その他

平常時と違う、細かい症状は他にもいろいろありました。
寝汗が酷くなったり、動悸がしたり、電車の中で無性に苛々したり、性欲減退、記憶が曖昧になる、などなど。
薬との関係もあります。時にそもそもの症状なのか、薬の副作用などで増幅されているのかあるいは新たに起きてきた症状なのか、よくわからなくなります(本当はこのあたりを見極めることは、治療に際しては大事なのだろうと思いますが)。

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これらの症状は単独で起きる場合もあるし、連関して起きるものもあります。連関して悪循環になると大変です。そして症状は長く続き、大変な思いをします。

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